#ギリシャ神話・王室・皇族御用達【アメジストの歴史 完全ガイド】
「愛の守護石」「幸せな結婚の象徴」として知られているパワーストーン、アメジスト。2月の誕生石でもあることから、今ではポピュラーな存在で、定番のパワーストーンの一つとなっています。恋愛成就、環境の浄化や安眠のお守りとして特別な効果があるアメジストですが、語源やルーツ、世界や日本でのアメジストの歴史をご紹介させていただきます。
そもそもアメジストはどんな石?
アメジストは和名で紫水晶と呼ばれており、モース硬度が7と硬く、日常の着用では簡単に傷がつかない充分な強度を持っています。名前の通り、紫色に変化した水晶で、水晶構成のケイ素の一部に鉄が入り、その鉄を取り囲んでいる酸素の一つの電子が天然放射線により破損することが原因で、紫色へ変化すると言われています。
また、放射線量や鉄の入れ替わり具合なので、紫色の濃淡が様々あらわれ、濃くはっきりとした色合いのものが価値のあるアメジストとされています。世に出ているアメジストは濃い紫からパステルラベンダーのような淡い色、グラデーションのかかった神秘的な雰囲気のものもあり、見ているだけで楽しめる天然石です。
アメジストの歴史
世界のアメジスト
世界中で愛されているアメジストですが、その歴史はとても古く、数多くの逸話や伝説などが残されています。今でこそ一般的な装飾品として広く愛用されていますが、王室との深い関係や、古代において神聖な儀式で用いられることなどもあり、特別な宝石として常に崇められてきました。世界のアメジストの歴史は、古代ギリシャ、ローマの文明までにまでさかのぼることができます。
王室ゆかりの宝石
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今でこそポピュラーなアメジストですが、昔は希少性がとても高く、ダイヤモンドやサファイヤ、ルビーなどの宝石と同等、または、それ以上の価値のあるものとされていました。アメジストは歴史を通し王室で愛され、クレオパトラ、キャサリングレート、エリザベス2世など、歴代の女王が所有していました。
また、紫色というのは合成染料が開発されるまで、衣料品の中でも最も高価な色であり、紫色の宝石であるアメジストは、冨と権力とのつながりをあらわすのにとても重要だったとされています。
イギリス、スウェーデン王室
イギリスの宝石のインペリアルセプターのカリナン第一ダイヤモンドの上にアメジストがあります。このダイヤモンドは世界で二番目に大きなカットダイヤモンドで、アメジストがとても重要とされているのが分かります。イギリスとスウェーデン王室には、素晴らしいアメジストがあり。
元々はビクトリア女王の母親であるケント公爵夫人が所有していたイギリスの作品です。スウェーデンは「ナポレオンのアメジスト」と言われ、もとはジョセフィン皇后がバイエルンの義理の娘アウグスタに贈ったもので、スウェーデンの王室に嫁いだとき、共にスウェーデンへ行ったとされています。
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聖書とアメジスト
アメジストについて、書面での言及を最初にしたのは聖書です。旧約聖書の二番目の書である出エジプト記では、イスラエルの祭司の胸当てに、12の部族のために12の宝石をつけなければいけないという話があり、そのうちの一つ、第三列にアメジストがあります。
また、ヨハネの黙示録では、世界の審判後、神の栄光に輝く新しい都「新エルサレム」の城壁の土台石を宝石で飾り、第12の土台石がアメジストです。この2つの話に出てくる12の宝石は同じもので、誕生石の元となったとされています。
日本のアメジスト
日本国内でも、アメジストは昔から愛されてきました。日本では、昔から紫色というのはとても気高く高貴な色であるとされてきました。現代では着物などの和装のアクセサリーとして使用されたり、和風の雑貨や小物などで用いられることも多く、親しみやすい身近な存在となっています。
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日本でもアメジストが採れる!?
アメジストはブラジルやザンビア、ウルグアイやスリランカなど多くの場所で採掘されますが、かつて日本でもアメジストの鉱山が存在しました。福岡県南会津郡や宮城県白石市、他にも秋田県や栃木県、群馬県などでアメジストの採掘が行われていたとされています。
今現在もアメジストは日本でも採掘されますが、昔に比べ多くの原石が採れるというワケではありません。ですが、日本産のアメジストも確かに存在します。一般的にはブラジル産やウルグアイさんが主流となっていますが、もしかしたらどこかで、日本で採掘されたアメジストに出会えるかもしれません、
日本の書物
日本の書物の中で、一番最初にアメジストが登場するのは、醍醐天皇に侍医・権医博士として仕えた深根輔仁という方が、平安時代に編纂された「本草和名」という薬の書物になります。この中で「紫石英」が紹介されています。これは後に紫水晶(アメジスト)であると訂正されました。
多くの誤りなどがありますが、この本はその後の医学界や博物学に影響を与え、貴重な資料として長年重宝されていたと言われています。
日本でも紫色は高貴な色だった
世界の認識と同様に、日本でも紫色というのはとても高貴な色で、特別な身分の方にのみ、身につけることが許される色でした・聖徳太子が定めた「冠位十二階」は、日本人なら誰でも知っていると思います。歴史の授業にも出てきますね。この冠位十二階の最高位の色も紫色です。
また、アメジストはその紫から気高い石とされており、歴史の深い村や祠などには、アメジストが祀られていたこともあり、今でも度々アメジストのクラスターなどが発見される時があります。
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パワーストーンとしてのアメジスト
日本では、宝石としてのアメジストよりも、効果や意味を重視したパワーストーンとして扱われることが多くなります。宗教的な儀式や、特別な場面で活用されることが多く、風水との掛け合わせも日本独特の解釈で浸透しています。また、風水では対局のものが縁起がいいとされているため、真反対の位置にあるブラジルで採掘されるアメジストが日本にくるということは、それだけで縁起物であり、究極の浄化石とされています。
2月の誕生石
誕生石の定義は様々な諸説があります。基本となっている起源は、先程の話にも出てきた聖書で12種の宝石がありましたが、それらが誕生石の始まりとされています。その後、1912年にアメリカで現在の誕生石に統一されました。日本では、アメリカの基準をベースに、日本特有の風土や習慣に合わせた若干の修正を加え、1958年に制定されました。
アメジストとバレンタイン
2月の誕生石であるアメジストですが、実は2/14のバレンタインデーと深い繋がりがあります。バレンタインの由来は聖ヴァレンタインという人物であるということは有名な話ですが、実はヴァレンタインはキューピッドの像が刻まれたアメジストのリングを身に着けていたとされています。
ヴァレンタインは、恋人達のためならば死をも厭わない人物でした。また、アメジストは愛情と幸福の象徴とされています。バレンタインデーにアメジストのアクセサリーを身につけることで、ヴァレンタインが大切な人への想いを伝える手助けをしてくれるかもしれませんね。
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アメジストの由来【ギリシャ神話】
天然石はギリシャ神話の中に数多く話があり、アメジストもその一つです。アメジストは、「酒に酔わない」「悪酔いを防ぐ」という意味があり、これはギリシャ神話と紐付いています。そして、ギリシャ語のamethystosという言葉そのものが、お酒に酔わないという意味があるんだそうです。一体アメジストはどのようなギリシャ神話なのかを話をご紹介いたします。
ギリシャ神話・アメジストが誕生するまで
酒の神「ディオニュソス」
まずは、このディオニュソスという神を紹介します。ギリシャではディオニュソスという名でしたが、ローマ時代はバッカスと呼ばれていました。酒の神様で、絡み酒や暴れ者とされており、とても厄介な神だったとされています。ディオニュソスは神様と人間のハーフで、父親が大神ゼウスで、母親が人間のセメレーという名の女性です。
ゼウスにはヘーラーという正妻がおり、嫉妬心からセメレーを亡き者とします。しかし、この時セメレーは身ごもっており、子供だけでも救おうとゼウスが守り育てました。その赤ん坊がディオニュソスです。
ディオニュソスとぶどう酒
ディオニュソスはぶどうを育て、その果汁でワインを作り始め、穏やかに暮らしていました。しかし、ヘーラーの嫉妬心は収まらず、今度はディオニュソスを手に掛けようと企みます。デーラーはディオニュソスの気を狂わせ、世界に混乱を招きましたが、大地の女神が正常に戻し、再びディオニュソスはワイン作りを始め、多くの人々に作り方を伝えます。
その後、ディオニュソスは自身が作ったワインを大量に飲むようになり、酔っぱらいになってしまい、こうして絡み酒や暴れ者とされるようになってしまいました。
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ディオニュソスとアメジスト
ある日、ディオニュソスが悪酔いしよからぬことを思いつきます。それが、「今から最初にここを通ったものをピューマに襲わせてしまおう」というとても残酷な思いつきでした。そこに、運悪く通ってしまったのが乙女、アメジストという女性でした。アメジストは、月の女神アルテミスに仕えており、ピューマに襲われるという時、アルテミスがアメジストを守るため石に変えたとされています。
紫色のアメジスト
その後、酔いの冷めたディオニュソスは、己の過ちを悔い、自分のやったことに驚愕し猛省します。そのときに、謝罪・お詫びの気持ちなのか、自分の作ったワインをその石に注ぎました。そのワインの色が石に入り込み、今ある美しく高貴な紫色のアメジストが誕生しました。
その後ディオニュソスはぶどう酒造りに専念したとされています。そのため、アメジストは悪酔いを防ぐお守りとして愛され、ローマやギリシャでは、アメジストの施されたカップでお酒を飲むと酔わないと信じられている場所もあります。
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【アメジストの歴史 完全ガイド】まとめ
アメジストの日本、海外におけるその歴史は、ギリシャ神話やエリザベス女王などの皇室、王族に愛されダイヤモンドと同等かそれ以上の価値があったのです。現代では、パワーストーン、天然石としての印象が強いですが。その歴史を遡れば、宝石としての”アメジスト”の時代が一番長かったのかもしれません。
王女、王族の王冠、ティアラや、装飾品には必ずアメジストが用いられていました。富と権力の象徴であり、パワーストーンとしての効果も当時から認知されていたようです。